イラストレーターとして生活する。

イラストレーターすざ木しんぺいのブログです。毎日絵を描いてお昼寝しています。

クリスマスの予定

お題「クリスマスの予定」

 

クリスマスは今年もやってくるのだ。

歌にしなくたって、そんなことみんな知っている。

 

「24,25は予定があるんですか?」

カフェの女店長が聞いてくる。

彼女は若く、こんな年寄りのスケジュールを本気で

知りたがっているわけもない。

毎週コーヒーを飲みにやってくる客に対して、言葉を交わさなければという

気持ちにかられたのだろう。

一人で店を切り盛りして、接客も熱心にする立派な人間だ。

 

「一番忙しい時期だよ」と返す。

「へぇ、そんなんですね」

それに続く台詞はなかった。

 

砂糖は入れない。

なぜかそう決めていた。

だが、入れたくなった。自分のルールをひとつ破ってまで、

変化が起こることを期待していた。

 

「いったい、これはなんなのだ……」

フサフサの白い髭を触りながら、さまざまな憶測が

頭の中を飛び交った。

 

毎年、山のように送られてくる子供たちからの手紙。

ある子は遊園地が欲しいと言い、

またある子は妹が欲しいと言う。

だがそれでも、できるだけのことは叶えてきた。

一応プロとして、ベストは尽くせている。

 

しかし、今回アジア圏の島国から送られてきた、

一通の便りに頭を抱えているのである。

ピンク色の封筒の中に、二つ折りにおられた和紙。

そこに書かれていたのは、衝撃の文字であった。

 

SEKAI NO OWARI

 

どうもこれは、この世の終了という意味だということがわかった。

もしかすると、これを書いた本人は現実に絶望をし、

終焉を望んでいるのではないだろうか。

はたまた、新しい歴史の幕開けに胸を高ぶらせているのか。

 

それともーー

 

「ただいま、帰ったよキャシー」

「あら、またあのカフェに行ってたの?」

家のドアを開け、玄関に入ると、

キャシーと名付けたトナカイがいた。

「あぁ、そうだよ、ごはんは食べたかい?」

「枯れ草にも飽きたわ、チーズをちょうだい」

赤い鼻を大きく膨らませた。彼女が不機嫌なのがわかる。

 

「ボタンを押そうと思うんだ」

私がそう言うと、キャシーは驚いた。

「えっ、なに言ってるの?なんで急に?」

そうだ、その通りだ。いきなりなにを言っているのだ、私は。

あれを押してしまえば、人類はおろかこの星もただではすまない。

突然、口から漏れた言葉に二人ともうろたえている。

 

いやしかし、もしかしたらそれしか方法はないのかもしれない。

 

たった一人の子供の手紙とはいえ、

私にとって、それは自分自身の存在理由、そのものなのである。

一回リセットをするだけだ。ひとつの惑星が、銀河系から姿を消すだけだ。

玄関から、リビングに移動した私たちは、

本棚の後ろに隠された扉を開く。

地下につながる階段を、ゆっくりと下りる。

何度も説得しようと声を上げるトナカイを、私は無視し続けた。

地下室にたどり着き、テーブルの上につけられたボタンに目をやる。

悲鳴のような声が、後ろから地下いっぱいに響き渡る。

人差し指が、ボタンに触れるか触れないかのところで、ズボンのポケットから、

携帯電話がメールの受信を知らせる。

 

「今日はお店にきてくれてありがとうございました

告白をお断りしてからもう来てくれないんじゃないかと思ってました

もしまだ間に合うようでしたら、やっぱりお付き合いさせていただくこと

できますか?」

 

涙は一瞬で流れた。

若い子と付き合えるぞ。体もさわれるぞ。

喜びは、老体の身体能力の限界を超えた。

言葉にならない声を、口から吐き出しながら、飛び跳ねる。足がつる。

痛さのあまり、テーブルに覆い被さる。

 

ボタンが押された。

 

 

 

今年見に行ってよかったもの

今週のお題「今年見に行ってよかったもの」

 

静寂が夜に張り付いて、丘の上から街を見下ろす。

灯りがひとつまたひとつと消え、来る朝に向けて眠りにつく。

僕らはそれに目もくれなかった。

 

空に散らばった星の光が何万光年の旅を終え、地球へと不時着する。

月明かりは優しい。皆がそうごまをするものだから、あの丸顔は鼻を高くした。

 

でも、そんなことなど僕らにはどうでもよかった。

 

住宅地のLEDたちが次々に目を閉じ、闇が闇としての本領を

発揮していくにつれ

 

「まだかな……」と彼女が言う。

僕も同じことを思う。同じタイミングで。

 

丘に立つ二人はまるで、無人島で助けを待つ漂流者のようだな。

そう思った瞬間、救助船はやってきた。

 

艶かしい体を黒光りさせ、それでいて神々しい光に身を包んだそれは、

二人の目を、四つの眼球を虜にさせたのだった。

 

「きゃあっ!」待ち望んでたはずの彼女が悲鳴をあげた。

ぼくは、それに対応する余裕などなかった。

「……これが、序の口流星群……」

次々と、空を滑っていく力士たちを見守ることしかできなかった。

いや、彼らにしてみればそれだけで充分であったのだ。

 

相撲という誰も目にしたことがない戦場へと、旅立つ勇者にとって、

見送る者がいるというのはとても心強いのだ。

 

「みんな泣いてる」彼女が落ち着いた口調で言う。

「寒いんだよ」とふざけて返してみる。

すると「裸だもんね」などと乗せてくる。

 

「君には、そう見えるかい?」

僕は、力士が裸体だなんて思ったことは一度もない。

「まわしさえあれば彼らはどこでだって戦えるんだ」

 

「家に帰ろう」

天空の白い星とそれ以外の黒い全ての中、彼女の声が響いた。

二人は、何も言わず街の方へと歩き出す。

一年後、僕も旅立つであろう空を背にして。

 

 

 

フシギなチカラのササキさん 第21話

こんにちは。

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今日は僕が趣味で描いている4コマまんが

「フシギなチカラのササキさん」の第21話を公開します。

【すざ木しんぺいのえ】

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フシギなチカラのササキさん 第20話

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